業界動向2026-07-10監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

国土強靱化の建設現場で、いま起きていること

この記事の要点

「工事現場って、もう仕事は減っていくんじゃないですか」

面談でこう聞かれることがあります。皆さま、この認識は実態とややズレがあります。建設業界全体で見れば新築需要は縮小傾向にありますが、老朽化した既存インフラの更新・強靱化という領域は、むしろ拡大している局面だからです。今回は、国土強靱化に関わる建設現場の実態について書きます。

率直に言うと、この分野はまだ「地味な業界」というイメージが強く、若手の関心を十分に集めていません。ですが、僕が現場の方々と接する中で感じるのは、社会インフラを守るという仕事の手応えの大きさです。

0. 前提 — 国土強靱化実施中期計画とは何か

国土強靱化実施中期計画は、大規模自然災害に備えてインフラの強靱性を高めるための国の計画で、2023年度から2027年度までの5年間、継続的な公共投資が示されています。堤防・河川護岸の補強、橋梁・トンネルの老朽化対応、道路の耐震補強、無電柱化など、既存インフラの維持・更新工事が主な内容です。この計画に基づく発注が、全国の建設・土木現場の仕事量を支えています。

誤解がないように申し上げると、この計画は新築の大型建設プロジェクトを増やすものではありません。むしろ「既にあるものを守る・強くする」という、地味ながら息の長い需要を作り出しているというのが実態です。

1. なぜ更新工事の需要が拡大しているのか

日本の道路・橋梁・河川構造物の多くは、高度経済成長期に建設されたもので、建設後50年を超える施設の割合が年々高まっています。国土交通省の資料でも、老朽化するインフラの維持管理・更新が長期的な政策課題として位置づけられています。この老朽化への対応が、更新工事の需要を押し上げている構造的な背景です。

加えて、近年の自然災害の頻発を受け、耐震基準や防災基準そのものが見直される場面もあり、既存基準では不十分だった箇所への追加工事も発生しています。

2. 現場で求められる職種

国土強靱化関連の建設現場で需要が高いのは、大きく①施工管理技士・現場監督②土木設計・構造設計の技術者③現場作業員・技能者の3つです。施工管理は工程・品質・安全を統括する役割で、経験者採用が中心です。設計職は構造計算や耐震設計の専門知識が求められ、専門性の高さがそのまま市場価値に直結します。

現場作業員については、資格が必須ではないポジションも多く、未経験からの参入を歓迎する企業も少なくありません。ここから施工管理技士の資格を取得し、キャリアを積み上げていくルートが業界の標準です。

3. 高齢化する技能者 — 若手確保という課題

土木・建設業界は、技能者の高齢化が進んでいることが業界共通の課題です。ベテラン技能者の引退が進む一方で、若手の入職者数はそれに追いついていません。この構造は、経験を積んだ人材の市場価値を高める要因にもなっています。「地味だが替えが利かない」という構図は、以前取り上げた保安業務と同じ論理がここにも当てはまります。

4. 年収の目安

面談で聞く目安値として、現場作業員で年収350万円台〜、施工管理技士の資格を持つ現場監督で年収500万円台〜600万円台という提示が多い印象です。設計職は専門性に応じてさらに上振れするケースもあります。あくまで独自ガイドの目安値であり、統計値ではない点はご留意ください。

5. 求められる資質

現場の仕事に向いているのは、予期せぬ変化に落ち着いて対応できる人です。天候・地盤・近隣調整など、計画通りに進まない要素が常に存在する仕事だからこそ、その場での判断力と、関係者との調整力が重視されます。逆に、決まったルーティンを好む方には、変化の多さがストレスになる可能性もあります。

6. 転職活動での伝え方

この分野への転職では、これまでの現場経験・工程管理経験を「安全とスケジュールの両立」という文脈で語ることが有効です。異業種からの転職であっても、複数の関係者を調整しながらプロジェクトを進めた経験があれば、施工管理の文脈に接続できます。

8. 発注元による違い — 国・都道府県・市町村

国土強靱化関連の工事は、発注元が国(国土交通省の各地方整備局等)、都道府県、市町村と多層にわたります。発注元によって工事の規模・専門性・求められる資格要件が異なるため、自分がどの規模の現場で経験を積みたいかを考えることも重要です。大規模な国発注の工事では、より専門的な技術者が求められる一方、市町村発注の工事は規模が小さく、幅広い業務を経験しやすい傾向があります。

ゼネコン・地場の建設会社どちらに転職するかによっても、関われる工事の規模感は変わります。自分のキャリアの方向性——専門性を深めるか、幅広い経験を積むか——に応じて、企業選びを進めることをお勧めします。

9. この分野特有のやりがい

国土強靱化関連の工事は、完成後すぐに成果が見えるものではありません。堤防の補強も、耐震補強も、「何も起きなかった」ことがその工事の成功を意味する、地味だが本質的な仕事です。この「守るための仕事」に手応えを感じられる方には、長く続けられる職域だと僕は考えています。

10. 建設業界のDX化という追加の波

国土強靱化関連の現場でも、ドローンによる測量、BIM/CIM(建設情報モデリング)の活用など、DX化の波が広がっています。従来型の施工管理経験に加えて、こうした新技術への理解がある人材は、今後さらに評価が高まっていくとみられます。IT系の経験を持つ方が、建設業界に転職して技術系DX推進の役割を担うケースも出てきています。

この分野は「体力仕事」というイメージだけでは捉えきれない、技術の進化が進む業界に変わりつつあります。

11. まとめとして、もう一度伝えたいこと

「守るための仕事」は目立ちにくいですが、その分、確かな需要と手応えがあります。国土強靱化という長期的な政策の中で、自分がどう関わっていけるかを考えてみてください。

12. 面談で実際に聞いた、印象的な転職エピソード

ある方は、住宅メーカーで現場監督として5年働いた後、国土強靱化関連の橋梁補強工事を手掛ける建設会社に転職しました。住宅と橋梁では規模も技術要件も異なりますが、「工程管理と近隣調整の基本的な考え方は同じ」という点を面接で具体的に語り、採用されました。入社後は、先輩技術者から橋梁特有の技術を学びながら、着実にキャリアを積んでいると聞いています。

別の方は、製造業の生産管理から、河川護岸工事を手掛ける建設会社の施工管理補助へ転職しました。工場の生産スケジュール管理の経験を、現場の工程管理に接続して語ったことが評価されたそうです。異業種からの転職でも、「計画を立てて実行する」という汎用的な経験は、思いのほか多くの職域で評価されるというのが、この分野を見てきた僕の実感です。

13. 資格取得の具体的なステップ

施工管理技士を目指す場合、まずは2級の受験資格(実務経験年数の要件)を確認し、通信講座や企業の研修制度を活用して学習を進めるのが一般的なルートです。多くの企業が受験費用の補助や、試験休暇の付与といった支援制度を持っています。

7. 実務パート — 今日からできる準備3つ

国土強靱化関連の建設現場に興味を持った方に、今日からできる準備を3つお伝えします。①国土交通省の国土強靱化関連の公開資料を読む(所要30分)。政策の方向性を理解しておくと、面接での説得力が変わります。②施工管理技士の資格階段を確認する(所要30分)。2級→1級の流れと、自分がどこから登れるかを把握します。③求人票を10件読む(所要1時間)。必須資格と歓迎資格の傾向を掴みます。

(結論)「守る仕事」にも、確かな伸びしろがある

まとめます。①国土強靱化実施中期計画により、老朽インフラの更新・耐震化工事が継続的に発注されている。②技能者の高齢化により若手・中堅の確保が業界課題であり、経験者の市場価値は高い。③施工管理技士等の資格を段階的に取得することで、未経験からでも現実的なキャリアパスを描ける。

皆さんいかがでしたでしょうか。まずは15問の適性診断で、自分がどの職域に向いているかを確かめてみてください。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. 国土強靱化に関わる建設現場の仕事とは具体的に何か

堤防・河川護岸の補強、橋梁・トンネルの老朽化対応、道路の耐震補強、無電柱化などが中心です。国土強靱化実施中期計画に基づき、既存インフラの維持・更新工事として全国で継続的に発注されています。

Q. 未経験から国土強靱化関連の建設現場に入れるのか

施工管理・現場監督は実務経験が重視される職種ですが、施工補助・現場作業員としては未経験からの参入例も多くあります。多くの企業が資格取得支援制度を持ち、実務経験を積みながら施工管理技士等の資格取得を目指すキャリアパスが一般的です。

Q. この分野の人手不足は今後も続くのか

土木・建設分野は技能者の高齢化が進んでおり、若手・中堅層の確保が業界全体の課題です。国土強靱化実施中期計画による発注の継続が見込まれる中、施工管理・現場監督経験者の需要は今後も高い水準が続くとみられます。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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